dondon_chan日記

ロンドンでエンジニア日記

ロンドンで働くこと、ベイエリアとの比較など

なんとなく、ソフトウェアエンジニアの花形はアメリカ、それもベイエリアかシアトル(場合によってはニューヨーク)なんじゃないの、ロンドンってちょっとどうなのよ、そう言う話をしたい

 

匿名なのをいいことに、割と下品に数字もばんばん出してしまおう、だってみんなきっとそう言うところをググりにきてるし。ただ、サンプルが如何せん「自分の周りの人」なので、そこのところ、お含みいただきたい

アラサーの筆者なので、友人知人は二十代三十代がほとんど。この道25年、みたいなベテランエンジニアの給与体系は想像もつかない

筆者はロンドンでエンジニアをしているけれど、アメリカでもちょろっと働いていたことがある。その上で今の場所にいるので、まあ、いわゆるポジショントークだ

 

で、つまらない結論だけ言うと、個人の優先順位によりけり、なんだと思う

 

ロンドンからシリコンバレーに移って行った人もいっぱい知っているし、逆にシリコンバレーからロンドンに移って来た人も(数は少ないけれど)知っている。そして、自分も実はちょっと前に、ニューヨークに居を移そうか、と言う話が出ていて、その時に結構念入りに金銭的側面を検討していて、結果として(いまのところ)ロンドンに居座っている

 

まず、圧倒的にシリコンバレーの方が給料が良い、これはもう目も当てられないくらい違う。ほぼ新卒みたいなエンジニアでもFAANG界隈で10万USDのオファー(エクィティ除く)をよく見かけるし、シニアエンジニアとしてちょろちょろっと生き残れば、これの3倍だったりするみたい

 

ニューヨークはどうやらこれよりちょっと下がるみたい、金融系で4年目で14万USDと言うような話を聞く。有名どころじゃなくて、わりと気楽な感じのポジションでも10万は硬い、と聞いたりする

 

で、ロンドンはグッと下がる。良いとこの新卒で4万-5万ポンド(600万円-750万円)が相場みたいで、5-10年の経験で7万かなと言う印象。ヘッジファンド系だったりすると、10万とか15万とか、景気の良い話も聞くけれど、そうなると胡散臭い額だなーと言う感じかな

 

こんな感じなので、ロンドンの若くて元気なソフトウェアエンジニアなんかは、結構アメリカを目指して海を渡ったりしてる。やっぱり夢のある金額だからね

 

で、英国のいまいちパッとしない感じは、ポンド安のせいもあるけれど、根本的に雇われ人のお給料格差がアメリカほど激しくない、と言うことに尽きる気がしている。

 

アメリカのお医者さんも、やっぱり気が遠くなるような桁(五千万とか)のお給料を貰ってて、イギリスのお医者さんは、もっと千万とか、そう言う桁らしい。と、知人のガールフレンド(ロンドンで研修医)が嘆いていた。でも、アメリカで医者になる為には数千万円の借金を背負ってメディカルスクールに通うと言う無理ゲーをクリアしなければならないので、ま、そうなるわな、と言う気もする。アメリカで知り合った医者の卵(研修医二年目)は、学資ローンに対する毎月の利子の方が、手取りより高いと言っていて、それはつまり、かりに毎月の手取りを全部返済に当てても、借金の額面が増えていく訳であって、それは地獄だなあ、なんだかとんでもない覚悟を持ったものしか医師を志してはいけない仕組みになっているんだなあ、と感嘆した覚えがある

 

で、これはうまく次の話題に繋がるのだけれど、アメリカという国の構造の極端さみたいなものが、ソフトウェアエンジニアの給料体系にも組み込まれている、と考えるとわかりやすい気がしている

 

例えば教育費がとても高いこと。教育格差がとても大きいこと。

語られ尽くされた話だけれど、私大で年間5万ドル(学費と寮費)だったりするし、公立大でもいうほど安くない。さらに専門職の多くは加えて大学院にいく必要があって、大学院の学費はさらに高かったりする

大学までの道もなかなか険しい。地域の公立校小中高の運営資金は、基本的に学区の固定資産税から出ていたりする。そうなると、固定資産が高い(金持ちエリア)の学校は資金潤沢、貧困エリアの教育は崩壊状態だったりする。負の再生産ループ、、金持ちエリアも公立校の質はムラが本当に大きいらしく、私立教育がほぼ前提になってる地域も多いらしい。で、良いとこの私立小学校だと、年3万ドルとからしい(子持ちではないので、「らしい」でしか話せない)一気に家庭持つの無理ゲー感が漂いだす

 

で、アメリカは、医療費がもうべらぼうに高いこと、健康保険が基本プライベートだから、pre-existing conditionに相当する持病があったりすると保険に加入できないことなど、ここもどうしてもハードモード感が漂う

最近聞いた具体的な例だと、胸にシコリを見つけた女性の話がある。ちょうど転職しようとしていて、もし何か診断されてしまうと、持病扱いになって次の会社の保険に加入を断られる可能性があるからと医者にいかなかったそうな。やっと転職先が決まり次の保険に加入できたので病院に行ってみたら、進行の早い癌で、もう手遅れかもしれない、という話、なかなかゾッとする

あるいは、もし病気になって、退職せざるを得なくなったら、会社からのベネフィットで加入していた健康保険を退会せざるを得ない場合が多い。そうすると詰んだ感しかない。待っているのはアセットを食いつぶした後の自己破産、、

そんな訳で、家族になるべく財産を残せるように、自死を選ぶ人さえいると聞く(流石に極端な例なんだと思うけれどね)

 

労働関連の法整備も、アメリカはリバタリアンの風が吹く

年に10日の有給休暇が義務付けられているだけで、しかもなかなか取れないらしい。良いとこのエンジニアはだいたいもっともらう(20日とか)らしいけれどね。

 

と、散々アメリカをディスったような話になってしまったが、要するに、病気になったリスクが高く設定されていて、子供を一人持つなら(12年*3万)+(4年*5万)必要、という変数設定されている、そんなモードで闘う世界なんだな、という話

で、そう思うと、夢のある給与体系じゃないとやってられないんじゃないかな

でも、健康に自信があって、子供を持たない人には、アップサイドの方が大きいんだろうな、と思う

 

で、やや話を本題に戻すと、ロンドンはそういう変数、どうなってんの、という話である

 

まず医療が基本無料であること

英国にはパブリック(公立) とプライベート(私立)の医療制度が並走していて、ちょっと複雑だけれど、公立は基本全て無料、全員に無料、である。これはもう、とてつもなく大きな安心感がある。最初にかかった時、お金を払うタイミングも場所もなくて、とても混乱した。日本式に慣れていると、医者に診てみらったあと、待合室でまたお代を払う為に待つけれど、そのステップがないのだ。だから、診察室から出て、混乱して廊下でしばらく待っていたら、「早く帰りなさいよ」と叱られてしまった。

でもって、プライベートの病院は別にパブリックなものに取って代わる、というよりは、それに加えて、というスタンスの様子。だから、プライベートの専門医にかかる時も、いつもパブリックのGP (家庭医) は誰か、と聞かれて、どうやら電子カルテで共有されているらしい(よく分かっていない)

プライベートにもパブリックにもかかったことがあるけれど、正直あまり差は感じなかった。プライベートの方が予約をやや取りやすいけれど、その分保険の手続きも煩雑で、せっかくプライベートの保険あるのに一回しか利用してない

筆者は割と病弱なので、医療関連の安心感はとてもありがたい

 

で、教育

大学の学費は今のところ一万ポンド弱なので、これはもう、米国と比べて圧倒的に安い。ドイツなど、EU圏のさらに安いところに留学する手も(今の所)ある。

小中高の公教育に関してはあまり詳しくないのだけれど、少なくとも同僚の話を聞いている限り、アメリカほど崩壊していないと解釈して良さそう

 

あと、有給休暇

例えば私は25日貰っていて、これは使い切ることになっている

確か週5勤務の人だと最低年20 + 祝日、である。で、パートタイムの人も、その勤務日数に応じた有給をもらう

で、これはとても大事なことだと思うのだが、有給休暇は傷病とは完全にベツモノだ。日本だと風邪をひいて有給を使ったりしてたけど、そんなことしたら怒られる。sick leaveといって、有給の傷病休暇がある

 

そしてワークライフバランス

自分なんかは10時7時で働いてる。割と働いている方で、もっと短い人も多い

で、割とフレキシブルである。4時に歯医者の予約があれば、3時半に抜ければ良いし、遊びに来た友人を空港に送って、朝遅め、も全然おっけー、自分の人生に仕事が合わせてくれる感じがして、とても気に入っている

 

 

で、たぶん一番大事な話なのだが、仕事について

これはそのうちちゃんと書きたいので、さらっと言うと、とくに見劣りしないと思っている

割と成熟期に入ったFintech系のスタートアップ(MonzoやStarlingなどのチャレンジャーバンクやTransferwiseなどの送金系、ロボアドバイザー系)がひしめきあっているし、機械学習系のスタートアップも多い、あのAlpha Goのディープマインドもロンドンベースだ

FAANGのロンドンオフィスはどれももちろん本社より小さいけれど、エンジニア職はいっぱいいるし、チームも多い。支社だからと言って見劣りする感じではない。グーグルはロンドン中心に巨大社屋を建設中だから、これからもそれなりに投資を続けるつもりなんだと思う

 

 

 

まあ、本人がロンドンを選んだ以上、ロンドン贔屓な話を当然している訳です

 

具体的な数字の話に戻ると、ニューヨークでの仕事の話が出た時、給料・税金・家賃などを調べ尽くして、ロンドンに残るかニューヨークに渡るか、悩んだ

ロンドンでの年収は(当時)6.5万ポンド、ニューヨークでの見込みは12.5万ドル

諸費用を計算し尽くしたら、毎月貯蓄に回せそうな金額はほとんど似たり寄ったりだった

 

で、ニューヨークはどうやら今より仕事時間長め、ストレス高め、何かとハードモード、という感じで、うーん、これは特に魅力的ではないなあ、と決断した

でも、一番最初に書いたように、これは個人の優先順位次第なのだ。自分の優先順位も今後変わるかもしれないし、何が正しいか、と言うつもりはない

ただ、シリコンバレー武勇伝がひしめきあうネット界隈に、ボソっとロンドンも悪くないよーと言う自分の感想を投下したいのです